シンポジウム「古民家の再生」 (建築文化財の保存と活用)京都・上七軒歌舞練場

2015年10月24日(土)

シンポジウム「古民家の再生」

(建築文化財の保存と活用)

京都・上七軒歌舞練場

2015年10月25日(日)

シンポジウム「西陣体験まちあるき」

元西陣小学校(説明会+まちあるき)
「京都西陣でのシンポジウム(2日制)の企画をした背景には、人口減少や少子高齢化等の激変する社会環境とそれにともなう膨大な空家問題、インフラとしての住いのあり方、衰退する木の文化等があります。シンポジウムでは、京都西陣を地方に共通する事例として、人々の生活する町に欠かせない“祈り”、“遊び”の場の考察、近代建築として著名な木造住宅を保存し学びの場とする試み、木造建築の設計や施工を木の文化から考える、西陣のまちと古民家の活用例、現代建築に生かす和の空間等々、多様な立場から主題に迫るものです。なお、今回は参加者それぞれが、パネラーの考え方に個人的な自分の体験を重ねるための機会(西陣体験まちあるき)も設定しています。地域の再生には、専門家による計画に日常生活感を加えて、構成員である人々のコミュニティ意識を統合することが、欠かせないと考えるからです。」

西陣シンポジウム「古民家の再生」Ⅰ

矢ヶ崎善太郎先生。
京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科准教授。
専門は日本建築史、伝統建築生産技術。

『西陣の範囲は堀川通以西、七本松通以東、今宮神社御旅所以南、一条通以北で、都の郊外との指摘があり、だから「内野」ではない「北野」という地名に独特のまち割りが出来たそうです。

応仁の乱後の織り手の帰京と座の回復、北野社を中心とした町並の形成が、その後の西陣の発展をもたらし、上七軒は旦那衆の、五番町ははた織り職人の花街として発展。

「京の立屋 かるうして」(西鶴)の「かるう」は「どこにでもある部材を使い、それを使いこなすことで京町屋を洗練させた」ことを指し、「家の作りやうは 夏をむねとすべし・・・天井の高きは冬寒く燈暗し」(徒然草)は京町屋に吹き抜けはだめとの意。

「上をそそうに 下を律儀に」(山上宗二)の「そそう」はさりげなくの意。「うめ木の多い座敷がよく候」(千利休)は、古くなった部材を埋めて使い続けることが大事で、尊いということを言ってるそうです。

保存と活用のための技は、町屋大工のことばに耳を傾けることが大切ということで締めくくられてました。』

西陣シンポジウム「古民家の再生」II

松隈章氏
北海道大学建築工学科卒業、竹中工務店入社。現在、(株)竹中工務店設計本部本部長付企画担当。聴竹居俱楽部、八木邸俱楽部代表。後山山荘俱楽部共同代表。住宅遺産トラスト監事。

『京都帝国大学教授、藤井厚二設計の自邸「聴竹居」(1928年竣工)の保存・活用の取り組みについてお話しされました。

建っている処は京都府乙訓郡大山崎町。
そこに藤井厚二は、日本の気候風土にあった真に日本人の心と体に適した「日本の住宅」を実現。世界的に評価されるに足る日本発の木造モダニズム建築。

1996年三重県立美術館での「聴竹居」の展示に協力してから足かけ19年、2008年からは私が借家人となって、大山崎町の住民と任意団体・聴竹居倶楽部を結成して代表に就任。予約制の一般公開に来た見学者は、年間約3,000人。テレビ番組(NHK“美の壺”)を御覧になられた天皇皇后両陛下が2013年6月24日に行幸啓。案内役は私が勤めました。

地域と共に存在し続ける生きた建築には、「愛着の連鎖、継承」を支える「たてものがかり」の存在が不可欠。聴竹居倶楽部はまさに聴竹居の「たてものがかり」。

その他にも、「芝川邸」「旧グッゲンハイム邸」「旧ジェームス邸」「後山山荘」「八木邸」等々のお話しをされましたが、「旧ジェームス邸」の保存・活用での「指定文化財化と永続的な事業の両立」のお話しは非常に興味深いものでした。

第1種住居専用地域でレストラン・ウェディング事業を成立させるために、近隣住民との会合を5回にわたって開催。ついに開業にこぎつけ、保存のための収入源を確保。もっとも強硬に反対した住民は、現在しばしばレストランに現れるそうです。

リビングヘリテージ(生きた建築遺産)、地元ありき、建築を社会ヘ拓く、等々文化的&経済的に持続可能な体制整備の必要性を熱っぽく語られていました。』

なお、「聴竹居」はシンポジウム後、竹中工務店の所有するところとなり、2017年5月には国の重要文化財に指定されました。

見学、予約等の詳細は下記のサイトをご覧下さい。

聴竹居:www.chochikukyo.com
八木邸:www.yagiteiclub.com
後山山荘:ushiroyamasansou.com
旧グッゲンハイム邸:www.nedogu.com
ジェームス邸レストラン予約:restaurant.ikyu.com/102166/

西陣シンポジウム「古民家の再生」 III

栗山裕子女史

WIN1級建築設計事務所主宰。
京都市文化財マネージャー。NPO法人古材文化の会副会長(www.kozai.or.jp)、NPO法人京都・森と住まい百年の会(www.kyoto.100.com)所属。

『上七軒歌舞練場にお似合いの和服で登場されました。はんなりとした風情からは窺えない厳しさもお持ちで、演台を指差して「何でこれだけの建モンにこんなハリの代モンがあるんやろね。」と仰ってました。

「京都・森と住まい百年の会」は、今までと同じように、ずっと木材を使って行けるように、木材を育てる森が今より豊かになるように、京都の山づくりを応援する活動をしているそうです。

「古材文化の会」は古建築及び古材の保存と活用、伝統的木造建築文化と建築技能の継承と発展、資源と共存する持続可能な社会の実現、等々を目指すとしています。

古民家の再生にあたっては、その建物の元の形を尊重し、少しプラスして住みやすくしていく事が大切。和の建物の基本は垂直・水平の線、シンプルな構成だからこそ素材の質感が生きて来るし、そこに住まう人の衣類や調度品も映えるというもの。和室が基本、見せ場は床構え、天井、建具等の材質や壁の仕様。

そして、骨組みを変えてしまったり、式台を土足で踏んだり、座敷の天井を抜いてしまったりするのは、長い時間を超えてきた建物に対して申し訳ない事ですと、キッパリ指摘されていました。』
 

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