「子羊の群れキリスト教会 風の教会」見学会(2016.12.10) 設計者松尾和生さんの説明要旨

左から、座かんさい西村征一郎座長、子羊の群れキリスト教会伝道者鈴木尚美さん、設計者松尾和生さん。

『「風は思いのままに吹く」(ヨハネによる福音書3章8節)というのが、最初に牧師さんから頂いた言葉。その言葉から、自由でのびのびと流れるようなイメージが出てくる。それによって建築の形が出来てくる。それが建築だと思う。建築というものはただ単に積み上げてつくるものではなくて、まず最初のイメージが一番大事で、お客さんが思ってるイメージをそのままつくる。そういうことが一番大切だと思う。

自然光が、そこかしこから入ってくる。この上に水盤があり、夏は水が気化して暑い熱を取った空気が、この地下の「光ホール」に流れてくるように設計しています。夏涼しく冬暖かい。お金がないので天井ははってません、コンクリートのままです。できた形は構造体で、デザインではない。建築というものは、必要なところに、必要な形ができていれば何も違和感がないということ。

造園もお金がなく、工事が終わる頃にお金ができたので、木を植えたということ。建築はお金がなくても出来るということなんです。こういう(お金のない)建築だから出来るだけ削減して、一番いい形にもっていくというのが、この教会のつくり方ですが、不思議なぐらい上手くいきました。

建築はイメージから入らないと、新しいものができないということ、似たものを作るんじゃなくて、どいうものが必要かというイメージが一番大事。最後には形になって出てくる。

ここの水面に当たった光は、四季折々で変わります。春分の日と秋分の日の太陽高度で、反射光を計算して、天井の形状を決めてます。普通の天井の形状であれば、あんなに光は入らない。ちょうど接線方向に天井が向いているので、光が伸びていくように見える。だから春と秋は、(教)会堂の中まで光が伸びてくる。会堂の壁、傾いたノアの箱舟のような壁が途中で止まっているのは、光を中まで入れるため。

冬は、会堂に入る入り口の下を光が入る。太陽高度が下がってくるので、反射光が緩くなる、緩くなったかげん、会堂の出入り口の開放部から光が入ってくる。太陽の高度と反射光と入射光を計算して、この会堂をつくってますから、光が美しい。

何故そのことを考えたかというと、聖書の中に、光の中を歩むような言葉があるんですね。神に会いに行くのに光の中を歩んで、神に会いに行く。そのためにこういう設計をしたということなんです。

この敷地は埋め立て地で、隣の病院以外建築当時は全く何もなかった。芦屋市からも「風の教会が出来てから、町が変わった」と高い評価を得た。何となく周りの家まで調和してつくってくれてます。一つの建築が町を変えていく。あんな荒れ果てた埋め立て地を一挙に変えて行く力が建築にはあるということ。』

(『2011年度アルカシア賞(アジア建築家評議会/Architects Regional Council Asia)』受賞)

建築名称:風の教会
発注者 :子羊の群れキリスト教会
設計者 :(株)日本設計(松尾和生)
施行者 :(株)大林組
所在地 :兵庫県芦屋市陽光町3番5号
主用途 :教会〈宗教施設〉
階数  :地上1階、地下1階
最高高さ:平均地盤+9.435m
構造  :RC造、S造〈屋根〉
延床面積:1,875.03㎡
竣工  :2008年12月

(編集/()/文責/写真 座かんさい同人 今北龍雄)